JH1DOMは2018年1月にIC7610を導入し、以後HFメイン機はそれ以前のIC-7600から7610へ切り替えました。
アパマンハムと無線機の関係を意識しながら、使用実感をお伝えします。

サイズ・・・
コンパクトながら質量感あり
IC7610のサイズはIC7600と同じです。幅が約35センチ、奥行きは30センチです。ご存知の通り無線機は、無線機の背後でアンテナ等の接続のスペースが必要です。これらを含めても、アパマンハムにとってはありがたいコンパクトサイズとなります。
私の場合は、カラーボックスの裏板を外して配線のスペースとして、カラーボックスの上にマシンを置いています。したがって、似たようなサイズだとしても、カラーボックスに置けないと「置く場所がない」「置く場所をわざわざ作る必要がある」ということとなり、まず、大変です。中型機は一見サイズは似通っていますが、実はカラーボックスに置けるのは一握りの限られた無線機です。その意味でこのサイズ、次世代でもこのままでお願いしたいところです。
写真のIC7610の上に載っているのはIC9700です。さらにその上でMFJ-1040Cを乗せて使っています。
写真だけではわかりにくいかもしれませんが、7610に比べると9700は「サブマシン」という感じが強くします。同じアイコムの機械で設計の基本的な発想はシェアされており、ボタン等はおおむね同じなのですが、液晶の大きさから始まる「質感」という意味では、圧倒的にIC7610に軍配が上がると思います。
アパマンハムにどれだけお金をかけるかは人によりけりの判断と思いますが、HFを100Wでやるということであれば、やはりこの機械、という感じがします。
なお、余談ですが、この機械でも机にはおけません。机が占領されてしまいます。現役の社会人として机の上で少なからず作業のあるアパマン派としては、机の上に無線機を置くという選択は今のところありません。

操作性・・・
利便性が向上、パソコンとの連携も満足。
IC7610は7600と比べ、前面のつまみ類はすっきりしました。結果、液晶画面が大きくなり、見やすくなりました。
7600を使っているときにやや使い勝手が悪かったボタン類は「MULTI」というボタンがまとめて代用するようになり、ボタンの数が減りました。そのため若干重厚感が犠牲になったかなと思います。
ただ、これは明らかに時代の流れであり、「リグでの操作」は、「ソフトウエア経由パソコンからの操作」へ本質的に切り替わっていくのだろうなと思います。すでに、遠隔操作は認められており、時々遠隔で対応されている方ともお話をさせていただいていますが、20年もすると無線機は「箱」となってモニターなどはなくなってしまっているのかなと思います。
当局が運用上盛んに使うつまみはまず「出力」です。これはIC7600では左下の小さなつまみだったのですが、今回は
MULTIボタンの機能として割り当てられ非常に使いやすくなりました
つぎよく使うのは
CWのピッチ速度です。これは右側に大きな独立したつまみが設置されていて非常に便利です。相手局の通信速度が極端に遅いときはそれにあわせて減速することにしていますが、簡単に対応できます。
また、SSBの際に頻繁に使う
RITも右下に大きなつまみとして独立しておかれており助かります。なお、RITのクリアが独立したボタンとしておかれていますが、RITつまみの長押しの方が実際の交信のばたばたを思うと便利に思います。
CWのジャックが全面にあるのも助かります。裏面だと大変骨が折れてしまいます(IC9700は裏面)。
メーターはデザインはとてもよいと思うのですが、個別の数値を見るためには表示を切り替えていく必要があり、使いにくさを覚えます。この素敵なデザインで各種の数値を一斉に見ることができないかなと思います。メーターを長押しすることで「マルチファンクションメーター」機能が立ち上がるの、一秒かければ変更できることはわかっているのですが・・・。これは希望です。より具体的には、当局は
PWRとSWRが切り替えなしに同時に確認できることを次の機種では期待します。
そのほかの機能は頻繁に使うものでないため、あまり操作性が気になるものはありません。デュアルワッチの機能は知っていますが、全く使っていません。当局は外からIC7610用には二本ケーブルを引いていますが、プリセレクタを通しているため、リグには一本しかつながっていません。実際のところはデュアルワッチをして、どうするのかなと当局の運用スタイルでは不思議に思ったりしています。スプリット運用もしませんので、機能があるのは知っていますが便利かどうかがわかりません。
ウォーターフォール、不満ありません。CQを出すのにあたり電波が出ているかどうかがわかることが大事であり、バンドコンディションが一望できればよいと思いますので、他社製品のようにカラーである必要もないかなと思っています。
前面にあってワンタッチの方がよいなと思うのが、「モニタ音」のオンオフです。CWは私の場合は必ずオン、PHONEの場合はまず間違いなくオフなため、この切り替えが毎度発生するのがやや不便です。ワンタッチに切り替えられるといいなと思います。
文字は全体に大きめになっているように思います。使用者の年齢勘案そうかなと思います。一方で液晶技術の向上で細かい文字も描写できるようになっています。視認性の向上という意味で進歩をを感じますが、あまり大きな文字ばかりとなってはなんとなく物足りないような気がするのかもしれません。
総じて、利用者としては、IC7600がコックピットに座った機長といった感じだったとすれば、IC7610は軽快なオペレーターに変わった感じです。

パソコンとの連携・・・
パソコンが操作の中心となる時代に十分対応。
当局の運用スタイルがデジタル化していく中、通信のコントロールはパソコン上のソフトウエアで行うことが多くなりました。
従ってこれから現れてくるリグはそれにきちんと対応をしている必要があるだろうと思います。おそらくそれは入門機種でも同様になるだろうと思います。
IC7610はパソコンとの信号のやりとりのための端子を備えており、パソコンのUSBとリグを結び、当局の主力モードであるFT8やCWに対応をさせています。
現状、パソコンとの連携機能に関しては満足しています。
当局はアパマンであり、リグを机の上に置くスペースがなく、カラーボックスを利用して机の横、体から見て左90度の位置に置いています。一方でパソコンは机の上に置かれているため、この90度の角度が体の負担になって来ました。ところが、パソコンとリグを練度させることで概ね操作はパソコンの方を向いてやればよくなり、WEBソフトウエアの発達とリグの性能向上で、通信の仕方は変わったなと思います。
そのほか、キーボードをリグに直接つなぐ機能も意外に便利です。特にPHONEのCQを繰り返すときは、現状タッチパネルを押す方法だと都度、体をひねる必要がありますが、キーボードを連結すれば、パソコンで作業をしながらCQが出せるため、この機能も便利です。

送信・受信性能・・・
問題を感じたことはありません
ただし、
なにかと比べて、というところまでは経験がなくわかりません
普通に欧米の遠距離局とモービルホイップ、100Wで交信できていることは紛れもない事実です。
また、FT8などではこちらからは到底届かないであろうと思う局が聞こえていることを思うと、十分な受信性能があるものと思っています。アフリカや地球の裏側でも50WだせばFT8がつながることや、たまに欧米とCWで普通につながります。
無線機の本質的な価値であるこれら点に関しては、アイコム技術陣が最も力を入れられたところと思いますので、私のほうからはコメントすることはありません。
このクラス最高レベルの送受信性能をもらっているものと思っています。
むしろどうなんでしょうか、FT8を除いたところでアマチュア無線全体のアクティビティが低いことのほうに問題があるのかなぁとも思ったりします。

(2020年6月20日更新)



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