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電離層コンディションの確認の仕方①

電離層状況の確認は無線通信、特にHF帯の通信を行う際には必須となります。
JH1DOMは電離層状況の確認にはNICT(情報通信研究機構、National Institute of Information and Communications Technology、かっこいいですね)のイオノグラムのページを参考にしています。リンクは以下です。
http://wdc.nict.go.jp/IONO/HP2009/realtime.html

通常は、この中から「4観測所同時表示」を選択します。

画面はもう少しいいものがあれば差し替えますが、左は、この記事作成時点(20年5月10日4時15分)のものです。
左上から時計回りに稚内、国分寺、沖縄、鹿児島です。
東京地区は右上国分寺を参考にします。

表の見方は横軸が周波数で一番上が30MHzとなっています。
縦軸は電離層の高さです。
周波数を連続的に発射して反射があると科学的な計算から電離層の高さがこの図表の上にプロットされることになります。

この時間の国分寺(右上)の電離層状況はどうかというと、
まだ早朝なので
低位層D層/E層、JH1DOMは実務的にこの二つの区別が正直よくわかりません)は見えません。低位層は低い高さ(たいがい100kmくらいです)に横一直線の線で現れます。これは太陽が上がると現れ、日が沈むと消えます。
低位層の最高周波数(MUF=Maximum Usable Frequency)は通常3MHz~5MHzくらいです。低い周波数の電波は低位層が出ると吸収されてしまうため、3.5MHz帯は低位層が出始めると遠距離はつながらなくなります。
なお、
ときにこの低位層が画面の中で横にずっと広がる様子が見えることがあります。よく見ると上の図表の山川(鹿児島)にその線が15MHzを超えるところまでうっすら見えていると思いますが、これがアマチュア無線家が待ち焦がれる
スポラディックE層(略称Eスポ)です。強力なEスポは分厚い雲のようにこのグラフの低いところに広がり、観測のために上級に発射された電波が電離層にあたり、地上で再反射しさらにEスポにあたりもまた戻ってきて観測されて…を繰り返すため何重にもなって現れます。また、その写真が捕まったらアップするようにします。
続いてその上地上200kmより上に現れるのがF層です。
HF電波はF層では「反射」されて戻ってきます
F層反射は強力で、それがゆえに電波が地球の裏側まで飛んでいくことになります。地表を直進する電波が近距離でも大きく減衰することを思うと、F層反射による電波の強度は全く比較にならないほど強力です。実感三桁は違うのでは、と思います。おそらく科学理論は確立されているのでしょうから、素人実感で申し訳ないところではありますが、上空に増幅器があってダウンリンクされているような感覚です。
右上国分寺のデータにF層が現れています。地上200km強のところ、1MHzくらいから始まり右上に伸びて4MHz当たりで消えています。これがFそうです。もう一つ上に見えているのは再反射で観測されているダミーのF層ですが、二度反射したことを思うとそこそこ本体のF層が強力であることを意味しています。当局の言葉で言うと「いいF層が出ている」ということになります。このF
層の左端がざっくりLUF,右端がざっくりMUFとなります。国分寺データはおおむね1~4MHzが上方垂直方向の短波帯更新可能周波数となります。より正確にはMUFは通信に使えないといけないため、右端のいくらかの部分は切り捨てられることになると思います。

これを用いて「斜め伝播可能周波数」を考えます。
すでにNICTが準備をしてくれています(リンク)のでそれを使うのがまずは手です。
リンクを開けていただくと各地区の斜め伝播可能が示されています。下の図は同時間の国分寺の斜め伝播可能周波数の解析です。

表の見方は、通信距離1000km(福岡くらいになりますでしょうか)だとすると、4.15MHz~6.30MHzが利用可能周波数、という風に読みます。

ハムの実感としては、上空200~300kmのところへ斜めにボールを投げ上げそれが向こう側どこまで届くか、というような簡単な三角関数の感覚で考えていくわけですが、東京→大阪は例えば500kmくらいだとするとおおむね底辺が2、高さが1になりますから、角度は45度くらいです。垂直成分は周波数×コサインシータになると思いますので、MUFをコサイン45度で割り算して‥みたいな感じに理屈としてはなります。

ただ、実感としては、1000kmを超えない国内通信はおおむねイオノグラムの右いっぱい(正確にはMUFは使えないといけないので右いっぱいではないと思います)くらいのところの周波数でないと使えないと思います。
1000kmを超えてくると斜め伝播を意識するようになります。北向きは基本的に電離層が弱いため多くは期待できませんが、九州から沖縄にかけて、ないしは韓国あたりが斜め伝播で応答をいただけるところです。だいたいMUFの1.25~1.5倍くらいのところだろうと思います。

NICTデータにはいろいろと読解に楽しいものがありますので、少しずつ続編を書くようにいたしますが、今回はここまでで。

(2019年5月10日更新)